パワハラが問題となった場合

(1) パワハラが問題となった場合に会社が取るべき行動

① まずは、調査

 会社が、パワーハラスメントと思われる行為を発見した場合は、速やかに、行為者、被害者、周りの方等から、事情を聴取し、調査をすることが必要であると考えられます。

 調査の際は、ICレコーダーに記録したり、調査報告書を作成し、調査内容を文書化しておくことが、後から裁判になった場合に有用であると考えられます。


② パワハラとまでは言えなくても、配置転換等をすべきことも

 なお、さいたま地判平成27年11月18日は、会社は、調査の結果、仮にパワハラの存在が直ちには認められない場合においても、うつ病の既往症のある被害者が上司に対して相談を持ち掛けたことを重視して、加害者又は被害者を配置転換したり、加害者の言動によって心理的負荷等を過度に蓄積させ、既往症であるうつ病を増悪させないよう配慮する義務があったと判示している点に、留意が必要です。


 つまり、調査の結果、パワハラとまでは言えなくても、従業員が、うつ病の既往症がある場合などで、精神的な負担を感じている職場環境のときは、会社としては、配置転換をする等して、職場環境に配慮する必要があるということです。


③ 調査の結果、加害者への処分、配置転換等

 調査の結果、パワハラと思われる行為があったり、パワハラの存在までは認められなくても職場環境を変える必要性があると考えられた場合は、加害者への処分、配置転換等を行う必要があると考えられます。


(2)裁判上違法とされた言動

 状況によって大きく異なると考えられますが、裁判上違法とされた言動を、ご参考までに、ご紹介致します(宮里邦雄ほか編『労働法実務開設10ブラック企業 セクハラ パワハラ対策』54~56頁。) 。

・「いい加減にせえよ。ぼけか。あほちゃうか。」

・「ぶっ殺すぞ、お前!」

・「辞めてしまえ」「会社を辞めた方が皆のためになるんじゃないか」「お前みたいなやつはもうクビだ」

 但し、パワハラとなることを恐れて、部下等に対する指導を萎縮した結果、大きな事故等が起きてしまってはいけませんので、部下等の名誉・人格を尊重しつつ、適切な指導を行うことが必要であると考えられます。

熊本の法律事務所 野口法律事務所 弁護士 野口敏夫 野口敏史

野口法律事務所は、弁護士歴45年目の野口敏夫弁護士とその長男であり四大法律事務所(五大法律事務所)と呼ばれる東京の大手法律事務所(弁護士在籍数当時500名弱)に勤務していた野口敏史弁護士が所属する 熊本では老舗の事務所です。 相続、遺言、複雑なM&A(デューデリ含む)、企業側の労働問題(団体交渉含む)、事業再生・倒産、複雑な訴訟、複雑な契約、英文契約等を得意にしています。