賃貸借契約のコツ

 個人であれ、企業であれ、賃貸借契約は、住居のためや、テナントに貸したりする場合等、契約をすることが多いと思います。


 契約書は、硬い言葉で書かれており、読むのが面倒くさいと思いますが、物件を貸す企業や個人の方は、賃貸借契約において、特に、①原状回復の箇所と②敷金の箇所を頑張って読んだり、不動産業者さんに尋ねましょう。


 賃貸借契約の原状回復の条項を、単に、「原状回復して明け渡すこと」というような抽象的な言葉にしておきますと、5年後とか10年後とか、実際に、賃貸借契約が終了して原状回復工事をするときになったときに、「原状回復」の範囲について、賃貸人と賃借人で争いになります。

 貸す方は、テナントであれば、原状回復について、「原状回復してスケルトンの状態にして明け渡す」とか、「ドアの色を元の黄色に戻す」とか、細かく規定しておくようにしましょう。5年後10年後を想定して、揉めそうな箇所は、事前に賃貸借契約書に書いておくようにしましょう。

 

 次に、敷金についてですが、貸す方にとって、敷金は最強の担保になります。

 例えば、抵当権ですと、実行するためには、弁護士さんに頼んで、裁判所に実行の申立てをしたり、費用や手間がかかります。また、相殺も、借りた側が倒産した場合は、相殺できる場合も限定されます。

 しかし、敷金は、裁判所に実行の申立てをしたりすることなく、借りた側の未払いの賃料や費用を、敷金から差し引くことができます。借りた側が倒産した場合も、敷金の場合は、多くの場合、敷金から未払賃料等を控除することができます。

 敷金の返還額に争いがあれば、借りた側の方が、貸した側が敷金から費用を引き過ぎたとして、賃貸人に対し、もっと敷金を返せ、という訴訟を提起する必要があります。つまり、借りた側の方の負担が大きいということです。

 したがって、敷金は、貸す側にとって、非常に有利なものです。


 賃貸人は、敷金について、特に、借りた方が、倒産してしまい、家賃も払えず、原状回復工事もできないときを想定しておくべきです。

 したがって、貸す方は、借りる側が倒産してしまった場合においても、貸す側が借りる方に代わって原状回復工事をできるくらいの敷金を預かれるよう、物件を貸す際に、借りる側と交渉をするのがよいでしょう。

熊本の法律事務所 野口法律事務所 弁護士 野口敏夫 野口敏史

野口法律事務所は、弁護士歴45年目の野口敏夫弁護士とその長男であり四大法律事務所(五大法律事務所)と呼ばれる東京の大手法律事務所(弁護士在籍数当時500名弱)に勤務していた野口敏史弁護士が所属する 熊本では老舗の事務所です。 相続、遺言、複雑なM&A(デューデリ含む)、企業側の労働問題(団体交渉含む)、事業再生・倒産、複雑な訴訟、複雑な契約、英文契約等を得意にしています。