パワハラの具体例

 令和2年1月15日に、パワーハラスメントに関して雇用管理上講ずべき措置等について定めた指針等が告示されました。

 詳細は、以下のサイトをご参照ください。

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000584512.pdf

 パワハラの具体例については、様々な議論がされてきましたが、告示に記載されている具体例について、記載致します。

 まだ抽象的かもしれませんが、厚労省が考えるパワハラについて感覚がつかめると思います。

 特に、「他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行うこと。」「

 相手の能力を否定し、罵倒するような内容の電子メール等を当該相手を含む複数の労働

者宛てに送信すること。」は、似たような行為をしている従業員の方もいるかもしれませんので、注意しましょう。


イ 身体的な攻撃(暴行・傷害)

(イ) 該当すると考えられる例

① 殴打、足蹴りを行うこと。

② 相手に物を投げつけること。

(ロ) 該当しないと考えられる例

① 誤ってぶつかること。


ロ 精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言)

(イ) 該当すると考えられる例

① 人格を否定するような言動を行うこと。相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動

を行うことを含む。

② 業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行うこと。

③ 他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行うこと。

④ 相手の能力を否定し、罵倒するような内容の電子メール等を当該相手を含む複数の労働

者宛てに送信すること。

(ロ) 該当しないと考えられる例

① 遅刻など社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意してもそれが改善されない労働

者に対して一定程度強く注意をすること。

② その企業の業務の内容や性質等に照らして重大な問題行動を行った労働者に対して、一

定程度強く注意をすること。


ハ 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)

(イ) 該当すると考えられる例

① 自身の意に沿わない労働者に対して、仕事を外し、長期間にわたり、別室に隔離したり

、自宅研修させたりすること。

② 一人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させること。

(ロ) 該当しないと考えられる例

① 新規に採用した労働者を育成するために短期間集中的に別室で研修等の教育を実施する

こと。

② 懲戒規定に基づき処分を受けた労働者に対し、通常の業務に復帰させるために、その前

に、一時的に別室で必要な研修を受けさせること。


ニ 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)

(イ) 該当すると考えられる例

① 長期間にわたる、肉体的苦痛を伴う過酷な環境下での勤務に直接関係のない作業を命ず

ること。

② 新卒採用者に対し、必要な教育を行わないまま到底対応できないレベルの業績目標を課

し、達成できなかったことに対し厳しく叱責すること。

③ 労働者に業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせること。

(ロ) 該当しないと考えられる例

① 労働者を育成するために現状よりも少し高いレベルの業務を任せること。

② 業務の繁忙期に、業務上の必要性から、当該業務の担当者に通常時よりも一定程度多い

業務の処理を任せること。


ホ 過小な要求(業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)

(イ) 該当すると考えられる例

① 管理職である労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせること。

② 気にいらない労働者に対して嫌がらせのために仕事を与えないこと。

(ロ) 該当しないと考えられる例

① 労働者の能力に応じて、一定程度業務内容や業務量を軽減すること。


ヘ 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

(イ) 該当すると考えられる例

① 労働者を職場外でも継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたりすること。

② 労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者

の了解を得ずに他の労働者に暴露すること。

(ロ) 該当しないと考えられる例

① 労働者への配慮を目的として、労働者の家族の状況等についてヒアリングを行うこと。

② 労働者の了解を得て、当該労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人

情報について、必要な範囲で人事労務部門の担当者に伝達し、配慮を促すこと。


 

熊本の法律事務所 野口法律事務所 弁護士 野口敏夫 野口敏史

野口法律事務所は、弁護士歴45年目の野口敏夫弁護士とその長男であり四大法律事務所(五大法律事務所)と呼ばれる東京の大手法律事務所(弁護士在籍数当時500名弱)に勤務していた野口敏史弁護士が所属する 熊本では老舗の事務所です。 相続、遺言、複雑なM&A(デューデリ含む)、企業側の労働問題(団体交渉含む)、事業再生・倒産、複雑な訴訟、複雑な契約、英文契約等を得意にしています。