M&A、事業承継における会社の価値

 皆さんが、中小企業のオーナーであるとして、その会社(株式)の価値は、M&Aや事業承継のときに、どの程度の額になるのでしょうか?


 会社の株式の価値は、大きく分けて、税務上の評価額と、取引上の評価額に分かれれます。

 税務上の評価額は、相続のときなどの相続税を算出するときなどに使われますが、取引上の評価額とは必ずしも一致しません。

 

① DCF法

 会社の株式の取引上の評価額は、生きている会社(廃業予定でない会社)の場合は、DCF法(ディーシーエフ法、ディスカウントキャッシュフロー法)が最も算出方法として適しているといえます。将来の予測された収益を、すべて、現在の価値に引き直して、現在の会社の価値を算出する方法です。


 本当はかなり複雑ですが、計算を簡単にすると、直近の3年や5年の「営業利益に減価償却額を加えたもの」の平均値に(1-実効税率)を掛けて、直近のキャッシュフロー(現金収益のようなもの)の額を算出し、それが、今後も続くと考えて、2~10%くらいの割引率で割り引いて、現在の価値を計算して、最後に、負債の額を引くというものです。


 例えば、営業利益が2000万円、減価償却費500万円、法人税の実効税率34%、割引率5%、負債が1億円があったとします。

 その場合、DCF法による株式の価値は以下のとおりとなります。

(2000万円+500万円)×(1-0.34)÷5%-1億円=2億3000万円


② 年買法

 上記の計算は、会社が永続する場合の価値ですので、企業は永続するとは限りませんし、現在は、将来が不透明な時代ですから、中小企業のM&A・事業承継のときは、「年買法」といって、時価純資産(土地などを時価評価した資産の額から負債の額を控除したもの)に営業利益の5年分を加えたものを、株式の価値の基準とすることも多いです。


 例えば、土地などを時価評価した資産の額が3億円、負債が1億円、最近の営業利益が2000万円の会社があったとします。

 その場合、年買法による株式の価値は以下のとおりとなります。

(3億円-1億円)+2000万円×5年分=3億円



 

熊本の法律事務所 野口法律事務所 弁護士 野口敏夫 野口敏史

野口法律事務所は、弁護士歴45年目の野口敏夫弁護士とその長男であり四大法律事務所(五大法律事務所)と呼ばれる東京の大手法律事務所(弁護士在籍数当時500名弱)に勤務していた野口敏史弁護士が所属する 熊本では老舗の事務所です。 相続、遺言、複雑なM&A(デューデリ含む)、企業側の労働問題(団体交渉含む)、事業再生・倒産、複雑な訴訟、複雑な契約、英文契約等を得意にしています。