ハンコなしにしても大丈夫な文書

 コロナ禍の影響もあり、可能な限り、ハンコを減らそうという動きが強まっています。

 契約は、法律で書面で作成することが要求されているもの以外は、口頭の合意で成立しますから、大部分の契約の成立にハンコは必須ではありません。

 しかし、後から、ハンコを押していないから最終版ではない等言われるリスクがあるので、重要なものは、やはり、署名+実印で押印した方がよいということになると思います。

 その他の文書について、ハンコを省略しても大丈夫か否かについて、検討したいと思います。


① 見積書

 まず、見積書は、契約書ではなく、単に提案書に過ぎないので、ハンコなしで問題ないと考えられます。

 ただし、見積書のみを作成し、その後、契約を結ばない場合は、事実上、見積書が、注文書の意味を持ちますので、以下の②と同じ考えになると思われます。


② 注文書

 契約というのは、申込みと、それに対する承諾があって成立します(民法522条1項)。

 契約書には、申込みと承諾が記載されているということになります。

 契約書を結ばなくても、注文書(申込み)と注文請書(承諾)で契約は成立します。

 したがって、注文書は、契約の一部を構成する重要なものとなります。

 例えば、相手から注文書を受領するときは、ハンコがない注文書の場合、後から、正式な注文でなかったと言われる可能性があるので、重要なものは、ハンコを押してもらっておいた方がいいということになると思います。


③ 請求書

 請求書は、契約で支払額と支払日が決まっているときは、本来は、請求書がなくても、支払う側は、支払日に支払う義務を負っています。

 したがって、請求書は、法的には、支払日が決まっていないときに、請求書を送付して、請求書に記載された支払日に支払いがない場合、支払日の翌日から遅延損害金を生じさせる効果を持ちます。

 以上から、契約書や注文書・注文請書で、支払額と支払日が決まっているときは、請求書は、法的な意味はあまりないので、ハンコを押す必要性は高くないということになると思います。

 最近は、e内容証明というインターネットで内容証明郵便を出せるものがありますが、押印はありません。

熊本の法律事務所 野口法律事務所 弁護士 野口敏夫 野口敏史

野口法律事務所は、弁護士歴45年目の野口敏夫弁護士とその長男であり四大法律事務所(五大法律事務所)と呼ばれる東京の大手法律事務所(弁護士在籍数当時500名弱)に勤務していた野口敏史弁護士が所属する 熊本では老舗の事務所です。 相続、遺言、複雑なM&A(デューデリ含む)、企業側の労働問題(団体交渉含む)、事業再生・倒産、複雑な訴訟、複雑な契約、英文契約等を得意にしています。