最近の法改正(令和3年8月)

最近の法律の改正事情(令和3年8月)について、ご説明します。


① 公益通報者保護法の改正

 公益通報者保護法の改正法は、令和2年6月12日に公布され、令和4年6月1日施行を目指して整備が進んでいます 。

 改正公益通報者保護法においては、①事業者に対し、「公益通報対応業務従事者」を定めること、内部通報に適切に対応するために必要な体制の整備等(窓口設定、調査、是正措置等)の義務付け(※中小事業者(従業員数300人以下)は努力義務)、②行政機関等への通報を行いやすくするもの、③通報者をより保護する等改正がなされています。

 ①については、令和3年8月20日に、政府から、「公益通報者保護法第11条第1項及び第2項の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針」が公表されました。


② 相続関連の改正

 令和3年4月21日、「民法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第24号)及び「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(令和3年法律第25号)が成立しました(同月28日公布) 。

 両法律は所有者不明土地の「発生の予防」と「利用の円滑化」の両面から、総合的に民事基本法制の見直しを行うものです。民法は様々な改正がされます。

 まず、不動産登記法の改正で、これまで任意とされていた相続登記や住所等変更登記の申請が義務化されます。

 また、特別受益による贈与及び寄与分については、改正後は相続開始から10年間経過すると主張することができなくなります。

 新法によって、相続等によって土地の所有権を取得した者が、法務大臣の承認を受けてその土地の所有権を国庫に帰属させる制度を創設することとしています。

 次に、民法等の改正によって、所有者不明土地の管理に特化した所有者不明土地管理制度を創設するなどの措置を講じることとしています。

 なお、施行期日は、原則として公布日である令和3年4月28日後2年以内の政令で定める日(相続登記の申請の義務化関係の改正については公布後32年、住所等変更登記の申請の義務化関係の改正については公布後5年以内の政令で定める日)とされています。


③ 育児・介護休業法の改正

 令和3年6月に育児・介護休業法が改正されました。

 令和4年4月1日から段階的に施行される予定です 。

 内容は、以下のとおりです。

1 男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設

2 育児休業を取得しやすい雇用環境整備及び妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付け

3 育児休業の分割取得

4 育児休業の取得の状況の公表の義務付け 

5 有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和


④ 上場会社のバーチャルオンリー株主総会に係る産競法が施行

 改正産業競争力強化法が、令和3年6月16日に公布、施行されました 。

 現行会社法において、リアル株主総会やハイブリッド型バーチャル株主総会の開催は可能であるが、バーチャルオンリー株主総会の開催は難しいとされています。

 改正産業競争力強化法によって、会社法の特例として、「場所の定めのない株主総会」に関する制度が創設され、上場会社において、バーチャルオンリー株主総会の開催が可能となりました。

 この制度を活用する場合には、経済産業大臣及び法務大臣の「確認」を受けることが必要となっています。

熊本の法律事務所 野口法律事務所 弁護士 野口敏夫 野口敏史

野口法律事務所は、弁護士歴45年目の野口敏夫弁護士とその長男であり四大法律事務所(五大法律事務所)と呼ばれる東京の大手法律事務所(弁護士在籍数当時500名弱)に勤務していた野口敏史弁護士が所属する 熊本では老舗の事務所です。 相続、遺言、複雑なM&A(デューデリ含む)、企業側の労働問題(団体交渉含む)、事業再生・倒産、複雑な訴訟、複雑な契約、英文契約等を得意にしています。